コラム:変態(へんたい)の反対(はんたい)は何(なに)か?
善1)goodの反対は悪2)evil。右の反対は左。大きいの反対は小さい。
では変態3)perverted, kinkyの反対は何か?
近所のうどん屋で大盛の麺を食い尽くし、どんぶりの残り汁に映る自分の顔を見つめながら私は考えていました。
私の家の近所には人気のうどん屋が数件あります。そのほとんどが靴を脱いで畳に上がる、昔ながらのお座敷4)Tatami roomタイプのお店です。
営業は11時~14時のランチタイムだけで、その数時間にすべてのリソース(麺と汁)を投入し、人々の胃袋を無慈悲5)ruthlessに満たしていきます。
決してオシャレな味ではありません、粗野6)roughで無骨7)boorishです。
24時間営業の便利さ、デートで使えるオシャレさ、ゆっくりできる雰囲気、そんな要素は微塵もありません8)nothing at all。むしろあってはいけません。
そう言ったものを全てそぎ落とした肉体美こそ、これらのうどん屋の神髄9)essenceなのです。
昔ながらの「味」と「やり方」を曲げない10)stand pat、これらのうどん屋の姿勢はかっこいいと思います。ですが同時に停滞しているとも思います。
ラーメンは進化しています。有象無象11)assortmentがひしめき合い12)to be crowded、次々と新しい味が生まれては消えています。
うどん界はこのままで良いのか?イノベーションを起こす者はいないのか?
ダヴィデ像の肉体美は不変的ですが、それを眺めている者だけでは美の進歩はなされません。
誰かがやらなければならない。でも、誰が?
私は稲妻に打たれました。そして立ち上がり、叫びました。
「うどん王に俺はなる!」
ということで、私の「うどん界イノベーション計画」が始動しました。
まず店名の候補をいくつか考えました。
その中で最もイノベーティブな名前は
「変態うどん」
「ど変態13)super perverted」
の二つでした。
忘れられない名前であり、珍しさからSNSで拡散されると思いました。
- 開店の数週間前からこの店名を巨大な立体看板14)a 3D signboardにして、店頭に掲げる。
- SNSで「変な店」ができたと伝わる。
- ホームページを事前に用意しておき、気になった人が情報をとれるようにしておく。
- 予想を裏切るオシャレな店舗で、「変態」の新しい価値を創造する15)create。
以上のアイデアがすぐに浮かびました。
店名の「変態」を強烈にプッシュするため、変態Tシャツ、変態メガネ等のグッズを販売します。
これらのグッズはクラウドファウンディングで資金を調達するときのノベルティとしても使えます。一口2000円で出資16)investmentを募り17)募る raise、出資者には無料食事券とグッズを進呈します18)give。
一食+Tシャツ=2000円なら妥当な取引ではないかと思いました。
これは行ける。間違いなく、業界に激震が走る19)be shockedと思いました。が、同時にいくつかの不安材料が浮んできました。
不安その1:
教育委員会20) Board of Educationにも激震が走り、近所の学校のPTAが実力行使21)take actionに出てくるのではないか?
そしてその時に、「自分は正しい行いをしている」と胸を張ること22)to stand tallができるのか?
不安その2:
まだ見ぬ私の未来の恋人23)my future lover who has never been seen yetは「変態うどんの店主」をパートナーに選んでくれるだろうか?
「「変態うどん」ごと、私を愛せ」と、その人に言うことができるのか?
これらの不安を通して自分の考えを整理した時、私は自らの過ちに気が付きました。私は「変態がテーマのうどん屋を作る」ことに夢中になり、「うどん界にイノベーションを起こす」という本来の目的を忘れていたのです。創造すべきは「変態の新しい価値」ではなく「うどんの新しい価値」だったのです。
「変態うどん」は「イノベーションの皮をかぶった私のエゴ」であることが浮き彫りになりました。
そして「変態」という店名を中心に展開していた私の「うどん屋計画」は、この瞬間に瓦解しました24)瓦解する、崩壊する collapse。
「変態」の対極25)collapseからこの計画を立てなおさなければならない。私はそう思いました。
そこで冒頭26)the beginningの問い、「変態の反対は何か?」にぶち当たったのです。
その2につづく
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